2009年10月31日土曜日

千利休 無言の前衛 赤瀬川源平著 を読む

利休本を探していたら、あの老人力の赤瀬川源平氏の著書「千利休 無言の前衛」に辿り着いた。野上弥生子氏の小説「秀吉と利休」を原作とする、刺使河原宏監督による映画の脚本を書いた後の作品である。利休の辿った道は、新たな美の追究をと、模索し続ける前衛芸術ではなかったかと問いかけている。自然界の中から宇宙の中から近寄ってくるものをすくい取る厳かな行為であったのであろう。感性の世界、同化していく世界なのでしょう。思考するとは、言葉による試作を重ねて積み上げていくものといわれているが、この日本独特の美意識は、未だ言葉になっていないものを沈黙の世界から掠め取っていく作業に当たる。学生時代の自分を思い出す。建築とは何か。どう表現していけば、評価物としての建築を造っていけるのか。饒舌に友と語り、得体の知れない不安から逃れていた自分を思い出す。「利休の美意識の中には偶然という要素が大きくはいり込んでいる。これは重要なことだ。偶然を待ち、偶然を楽しむことは、他力の思想の基本だろう。私はそこに、無意識を楽しむ項目を付け加えたい。」「偶然も無意識も、それは自然がなすことである。それに沿って歩くことは、自然に体を預けることだ。他力思想とは、そうやって自分を自然の中に預けて自然大に拡大しながら、人間を超えようとすることではないか。」と赤瀬川氏は、結んでいます。美の表現者たる対峙の仕方、覚悟、身構えを教えてくれる本でした。

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